キッチンドランカー編

そろそろ春も近づいてきているというのに南泉一文字は一向に炬燵から出てこようとしない。
二人で出かけたいという気持ちを我慢していた山姥切長義はとうとうしびれを切らした。
せめてこたつから引っ張り出そうと「久しぶりに厨で酒を酌み交わそう」と誘う。
しかし、南泉は炬燵から出たがらず渋っていた。

「君の好きな酒を用意してやるから！」
ところが、南泉は「お前、オレの好きな酒って何か知ってんのかあ？」と聞き返してきた。
当たり前だ、と返しかけて山姥切はふと気づいた。
そういえば、宴会や晩酌でも料理に合わせて酒を選ぶことが多く、これといっていつも決まった酒を飲んでいるわけではない。
『一番好きな酒』となるとパッと思い浮かぶものがなかった。

「まあ？　オレはお前の好きなやつ知ってるけどにゃあ、顔に出やすいし？」
そう挑発されておいて引き下がる山姥切長義ではない。
「必ず当ててやる、待っていろ猫殺しくん！」

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